管理職セミナー安藤弘一講演録(1)
2009年7月20日

"自分力"が求められる時代

執筆者: WEBインソース編集部

◆安藤弘一プロフィール◆
1978年、アメリカ・カーネギーメロン大学大学院卒。MBA取得。帰国後、三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。 UFJホールディングス(三菱UFJフィナンシャルグループ)の執行役員・経営企画部長に就任。インソース・シニアアドバイザー。

私がビジネス教育に取り組む理由

最初に私の略歴について簡単に触れさせていただきます。私のバックグラウンドは大きく言うと、2つあります。1つは銀行のバックグラウンドです。銀行では、人事部長や経営企画部長などを含めて、6つの“長”を経験しました。2つ目は、現在の監査役というバックグラウンドです。すでに5年ほど経験を積んでいます。

以上を背景に、現在は、ビジネス教育の研究にも取り組んでいます。この研究を行うきっかけとなったのは、監査役になった時に、これまでの経歴を活かして、何か若い人のために役に立つことができないかと思ったことにあります。

私は、銀行で人事部長をしたときに、若い人が、ほんのちょっとしたことをきっかけにして大きく成長することをみてきました。この「ほんのちょっとしたこと」を究明し、体系的に整理できれば、若い人にとって、どんなに有益だろうか、と考えたわけです。この思いが、私をビジネス教育の研究に駆り立てました。2年前に、この一環として、『ランニングシャツを着ている田中部長はなぜ仕事ができないのか』という本を出版しました。

この2年間は、上場会社の社長にお会いして、「社長の成長を支えたものとは、いったい何であったのか」と質問をぶつけています。道を極めた人の成長要因に ついて生の声を収集して、若い人に提供したいからです。これまで、40、50名の社長さんとインタビューを終えたでしょうか。

本日、会場に来られている方々の会社の社長さんにも何名かお会いしています。今日の話の中でも、インタビューから得られた社長さんの貴重なお話を紹介させていただきます。

「自分力」が求められる時代に

かつて、会社では「組織力」が大切だと言われました。しかし、今は違います。「組織力」よりも「個人力」の方が大切だと言われています。何故でしょうか。たとえば、会社での会議を思い浮かべてください。「どうしよう」と皆で悩んでいるとき、誰かの一言が契機になって物事が進み出します。つまり、誰かのひと言(=個人力)が引き金になって、これが組織力へと転化されるのです。この点が今と昔の違うところです。

かつての高度成長期には、モノはつくれば売れました。このような状況のもとでは、皆が忠誠を誓い、「おお、モーレツ」なリーダーのもとで、がんばっていればよかったのです。しかし、経営環境は変わりました。価値創造性を発揮できない会社は、生き残れません。

この価値創造性の発揮とは、常に、個々の力が出発点です。100人の人が集まっても、最初の引き金は、ある特定の個人です。ですから、会社は、皆さんが個々にもつ力に期待をかけています。会社は、個人力重視の経営に舵をきっているのです。

会社の立場から個人の立場へと視点を変えます。日本の会社では、高度成長期を支えた年功序列や終身雇用の制度が姿を消そうとしています。これは、いったい何を意味するのでしょうか。そうです。会社が、皆さんの生活上の安全と安心を守ってくれる時代が終わりを告げようとしているのです。これほど、会社経営が厳しいのです。皆さんは、いつ何時、合従連衡の渦に巻き込まれるかもしれません。このような中で、皆さんが、「安定した会社で働きたい」と願うのは、もはや、無いものねだりというべきではないでしょうか。

では、皆さんは、どのようにして、自分自身の身を守ればいいのでしょうか。

答えは、明快です。自分で自分を守るのです。皆さんが、どのような立場に置かれても、皆さんをしっかりと守ってくれるものとは、皆さんが身につけている自分力です。これ以外に何もありません。この点からも、皆さんは、しっかりとした自分力を身につけることが大切です。以上のとおり、会社は、皆さんの個人力を必要とし、皆さんは、自分自身を守るために、自分力を必要としています。時代は、まさに、“個人が主役”の時代です。皆さんは、新しい時代に適った自分力を意識して養成しなければなりません。 

自分力養成の基本

1.自己責任という考え方をしっかりともつこと

“個人が主役”という言葉に何かバラ色のようなものを感じている皆さんもおられるかもしれません。しかし、この言葉には、自己責任という考え方が貫かれている点に皆さんは留意しなければなりません。会社が優勝劣敗の中にあるように、個人も優勝劣敗の中にあるのです。この点、皆さんは、「自分の夢は自己責任において実現します」という覚悟をしっかりともたなければなりません。

2.目的と手段の法則に従うこと

ある社長の言葉です。

「会社経営の原理原則は至ってシンプルだ。会社経営の目的である“会社価値の最大化”を達成するために必要な“思考方法と行動指針”を持ち、これを徹底して実践することだ」。非常に含蓄ある言葉です。この言葉は、まさに、会社経営とは何かを端的に表しています。

会社は明らかに目的追求型の組織です。ですから、会社においては、誰でも、まず、目的を明確にして、この目的を達成するために適切な手段を選択し、これを徹底して実行しなければなりません。この結果、いい成果が得られるのです。この社長は、このように説いているのです。目的がなければ、人も組織も動けません。良い目的がなければ、良い結果は決して得られません。良い結果を得るには、目的の達成に直結した適切な手段を選択し、これを徹底的に実行しなければなりません。

私は、この成功の秘訣を「目的と手段の法則」と呼んでいます。皆さんも、この法則を、あらゆる行動のベースに据えてください。この結果、必要な自分力を効率的に、また、効果的に養成できるのです。

3.誰よりも事業に精通すること

私はMBAを取得し、MBAの教えを実践してきた者の一人です。したがって、MBA理論には、「結構、机上の空論が多い」と否定的な見方を披露する立場にあると思っています。たとえば、戦略論に「SWOT分析」という方法があります。

「自社の強み(Strength)」、「自社の弱み(Weakness)」、「市場の機会(Opportunity)」、「市場の脅威(Threat)」を総合的に分析・評価すれば、戦略が形成されると唱えるものです。

しかし、実際は、このような枠組みといくら“にらめっこ”したところで、戦略は決して出てきません。戦略は、自社の事業に精通し、自社の問題点を掌握していれば、自然と形成されるものなのです。皆さんには、この点、誰よりも自社の事業に精通することを、自分力養成の方針にしっかりと据えていただきたいと思います。

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