2009年7月21日

実践事例で学ぶ・成功する自治体職場のプレゼン?「市庁舎建替えに関する住民説明会」

執筆者: WEBインソース編集部

事例:「市庁舎建替えに関する住民説明会」

X市では築50年の庁舎建替えを検討中です。本件に関する各地区住民説明会を開催することになりました。

Y地区の説明責任者に選ばれたのは、技術系職員で東京出身のAさんです。今まで説明会の経験がなく、この地方の出身でもないこともあり、Aさんは不安でいっぱいです。

住民説明会には、高齢者を含む多数の来場者が集まり、冬の夜6時にスタートしました。うすら寒い説明会場ではコートを着る人もちらほらいます。Aさんの顔は、緊張でこわばったままです。

当日配布した分厚い、細かい字がびっしり書かれた資料を、専門用語を交えながら、順を追って、淡々とうつむきかげんに説明しています。

会場からは、「寒い!」「話が良く分からない!」「住民メリットが分からない、市職員のエゴで建替えるのではないか」などの野次も飛び、 険悪なムードになっています。

なぜ、こんな状況になったのでしょうか?どうすれば良かったのでしょうか?

20代、自分のプレゼンは意味不明と言われた!

プレゼンテーション(以下、プレゼン)でお困りのみなさんが多いと思います。 「人前で話すのは苦手だな」「できれば人前で話したくない」こんな声が聞こえてくる気がします。現在、プレゼンの講師をしている私ですが、20代のころは「お前の話は意味不明だ」「しどろもどろで人前に出せない」と言われ続けてきました。 今でも、人前に出るのは勇気がいりますし、あがり性は治っていません。しかし、こんな私でも多数の修羅場をくぐり抜け、その結果、ほどほどうまくなり、ビジネスの成果を上げてきました。 そんな経験と現在の多数のプレゼン指導実績を踏まえ、実践プレゼンのポイントをお話したいと思います。

プレゼンの構成要素について

プレゼンは業務知識+一般常識+伝える技法

プレゼンに必要な要素の70%は、仕事の「業務知識」と社会の「一般常識」です。あとの30%だけが「伝える技法」です。それもかなり「自分流」で問題ありません。口下手な人は口下手なプレゼン、頭のいい人は頭のいいプレゼン、根回しのうまい人は話さなくても良いプレゼンがあります。プレゼンの目的は「相手に話を理解させ、賛同を得る事」。伝える技法で必要なのは、「美しい話し方」ではなく、その人なりの「説得の方法」です。 アナウンサーのように流暢な話し方ができればそれに越したことはないですが、そもそも、プレゼン目的は、「自分の考えを正確に他者に伝え、それを相手が理解し、相手の賛同を得る事」です。 相手に「あんたの話はわかった。賛成するよ」と言ってもらえるだけでいいのです。

今回は、最低限の努力でわかってもらえるプレゼンについて、現場事例を踏まえ、考えてみます。

住民を主役とし、来場者に配慮した資料を準備する

まずは資料の準備です。現実問題として、良いプレゼンペーパーがあれば、多少話がまずくてもしのげます。 特に資料作りが得意な方は、腕の見せ所です。20分程度のプレゼンテーションであれば、A4用紙で最大4枚ぐらいの資料を用意します。このとき、「分厚い」資料は厳禁です。聴衆は資料をめくるだけで疲れてしまうからです。 資料はできるだけ少ないのが基本です。

内容を順次ご説明しますが、特に注意したいポイントを2点あげます。

(1)字の大きさは原則12ポイント以上

ズバリ、来場者に50代以上の方がいる場合、大きな字で書いた資料にすべきです。高齢者にとって、小さな字は想像以上に苦痛です。 なにより資料が読めなければ、「しゃべり」だけで説明会に臨むことになり、不利です。

(2)資料の「主語」は住民にすること

皆さんは知らず知らずのうちに、「お役所言葉」を使っています。 これは、住民にとっては実はあまり気分の良いものではありません。今回のケースで言えば、「住民のみなさんにご利用いただく市役所」というように、住民が主役の言葉遣いで書くようにしましょう。

聴衆に配慮して、聴く環境を快適にする

次に、一般常識として、聴衆への配慮を行うことが絶対条件です。例えば会場が「寒い」のは、論外です。経費節減もわかりますが、風邪など引いては大変です。 会場準備段階で、暖めておくべきです。話す前に聴衆を敵に回さないことです。

プレゼン開始?笑顔、方言などで「われわれ」の関係を構築すること

今回のように、いきなり本題に入るのは得策でありません。まず、話者と聴衆の間の関係作りが必要です。具体的には、にこやかな笑顔(絶対笑顔で!)で本題とは少しそれた話(たとえば、自分と地域の関係など)を先に述べて、あなた」と「私」の関係を近づける努力が必要です。親近感が増せば「この人の話を(好意的に)聞いてやろう」という意識が高まります。 方言、同郷意識などを活用すべきです。地域の言葉は効果的です。無理に標準語で話をする必要はありません。 冷ややかな状況を「あっためる」にはまず、「われわれ」という意識づくりからです。

例えば、「お寒い中、ご来場誠にありがとうございます。寒いときは遠慮なく、おっしゃってくださいね。 私の父もここの地域出身なんです。子供のころ良く来ましてね」というように、 人として相手に配慮した内容、地域と自分のつながりを自分の言葉と笑顔を交えて伝えます。

こちらの話を理解してもらう工夫のポイント

以下は、プレゼン資料を作る際にも重要です。あわせて考慮してください。

(1)専門用語、業界用語、カタカナ禁止

「専門用語」を使う際は要注意です。話を聞いて「楽しい」とは、話の内容が無理なく「わかる」ことです。「わからない」と「つまらない」のです。よって、専門用語、カタカナ語は原則使わないで話します。もし、どうしても使わざるを得ない場合は、「ひらがなことば」で補足説明します。

(2)資料の取り扱いをナビゲートしながら、ゆっくりとしたスピードで話す

聴衆は、自分の話を聴くのが今日「はじめて」という事実を忘れてはいけません。また、ページをめくるなど、資料の取り扱いにも当然慣れていないので、話すスピードは資料を目で追うスピードにあわせて、比較的ゆっくり話しましょう。

(3)話す分量は資料の4分の1程度にすること

「順を追って、淡々と」資料を全部読まれては聴衆も退屈です。資料を読むスピードは耳で聞くスピードの約4?5倍ですから、資料は4分の1程度読むだけで十分です。 読んでいく際にも、書いてあるままではなく、少し短く言い換えて伝えると、話が頭に入りやすくなります。

(4)話す際の最大ポイントは「目線」と「笑顔」

40字に一度目線を上げ、首を左右に振りながら話すのがポイントです。「うつむきながら」話してしまっては、せっかくのプレゼン準備が水の泡です。 弊社で実施しているプレゼン研修の中でも、一点凝視で話したり、目線が資料から全く上がらないなど、「目線のトラブル」をかかえている受講者が実に多いものです。

これが信頼感を失い、プレゼンをつまらないものにする最大の元凶です。聴衆全てと目線を合わせるように話しかけるのが正しい方法です。そうする事で受講者の興味を引き、信頼が得られます。 具体的には、目線だけを左右に向けるのではなく、首を左右に振るように意識して話すとカンタンです。

加えて、目線を上げる(聴衆を見る)と、口が閉じ、丁度良い間が作れます。 40?50字話すたびに一度顔を上げて、聴衆を見るようにすると、話しが分かりやすく、信頼感も高まります。 その際、聴衆に向けた顔は「笑顔」であるべきです。理由は言うまでもないでしょう。

実際、自分がそんな風に他の人に映っているとは想像できないものです。 ですから、一度、ビデオカメラで自分のプレゼンを撮影し、チェックしてみることをお勧めします。

「具体的なメリット」を「組織の代表として切々と」語ること

「住民メリットが分からない」こう言われてはつらいですね。

「良く考えれば、住民のみなさんもわかるはずだ!」とか「住民は考えが足りない」と考えてはいけません。 聴衆の賛同をいただくには、メリットを3点程度、最初に具体的に伝えるべきです。

その際、「組織の論理」、「法律が理由」などを強調しない事です。 あくまで、住民メリットを具体的な数値で訴える事が必要です。「将来地震が起きたら困る」より、「市庁舎が地震で倒壊しては、被災者の救援が遅れ、この町での死傷者が100名増えてしまう」という様な数値化した説得が必要です。

加えて、話を分かっていただこうという「熱意」が重要です。組織の代表として熱意を、自分の言葉で語る姿勢が聴衆の心を打ちます。
 

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