2009年8月12日

現場にマッチした育成計画、育成計画書の作り方

執筆者: WEBインソース編集部

研修を見直せと言われたら・・・

人材育成計画に関して、「この厳しい環境下、研修コストを削減しつつ、内容をより実践的なものに見直せ」という指示を経営陣から受けていらっしゃる人事・研修ご担当者の方も多いかと存じます。リーマンショック以降、このようなお話をきっかけとして、人材育成計画の見直しをご支援させて頂くことが非常に多くなりました。見直しのプロセスで強く感じるのは、研修内容が現状にマッチしていなかったり、過不足があったりして、現場のニーズにダイレクトに結びつく研修が、十分に実施されていないという事実です。皆様もぜひこの機会に研修体系の見直しをされるようお勧めします。

 

「ムリ、モレ、カケ、ムダ」を現場の声から見つけ出す

例えば、ある企業では、長年"入社1年目は、半年間の集合研修で業務の基礎から応用までを徹底的に学ぶ"というのが通例でした。しかし、現場から、「知識不足の新人に応用レベルまで研修してもすぐに内容を忘れてしまい、ほとんど効果がなく、結局、現場で鍛えなおしている」という声が聞かれました。そこで、研修体系を変更し、基礎的な研修を1ヶ月間実施し、以降はフォローの集合研修を定期的に開催するという方式にしました。そうしたところ、研修時間の短縮と新人の早期戦力化ができました。

現場の声をヒアリングし、それを研修体系・育成計画に活かすことで、研修の「ムリ、モレ、カケ、ムダ」を洗い出すことが可能です。具体的には、まず、経営陣、部門長、課長クラス、係長クラス...と各階層へのインタビューを順々に行い、自分自身や部下に求めるスキルの洗い出しを行ってもらいます。併せて、アンケートも実施し、現場のニーズを幅広く集め、研修体系に組み込んでいきます。

 

時間とコストを短縮する

上記のような方法で研修の見直しは有効ではありますが、コストも時間もそれなりに必要となります。そこで、わずか数時間のワークショップを通じて研修の見直しができてしまうという、そんな夢のような方法(秘伝のレシピ)をご紹介いたします。

 

今回は、新人・若手を研修対象に想定し、求められるスキル・知識の洗い出しから、研修体系作り、そして、研修体系を踏まえた簡単な育成計画書を作成してみましょう。

作業のポイント

人事・研修担当部門ではなく、現場の社員が自分自身で考え、必要なスキルを洗い出すことで、具体的で現実的なものが挙がります。より現場の実態に即したものにするためには、部門ごとのシートを作るのが、有効です。また、目線を変え、同じ対象について、2階層(中堅層・管理職)から洗い出すことで精度を高めます。
その上で、もし、人事・研修担当者や経営層から追加すべきものがあれば、追記し、双方納得の上で、今後必要なスキルを整理することが可能となります。

 

必要なスキル・知識の洗い出し、整理

【ステップ1】
中堅層による若手に必要なスキルの洗い出し?スキル洗い出しシートの作成

まず、中堅層4?6人(できれば、自社内で評価の高いメンバー)に声をかけて、会議室などに集まってもらい、自分が新人時代に必要だと思ったことや、新人に身に付けてほしいスキルや知識などを最低10項目、そして、いつまでに身につけるべきか(育成期間)、さらにスキル・知識が必要な理由を各自に書いてもらいます。

ご参考1:必要な知識スキル洗い出しシート
(テンプレートと記入例があります)

【ステップ2】
中堅層が議論しながら項目に軽重をつけ、スキルマップを作成する

ステップ1で作成した「必要な知識・スキル洗い出しシート」を持ち寄り、例えば「社会人スキル」(社会人として必要なマナー・常識)、「業務基本スキル」、「業務応用スキル」などに分類し、併せて、そのスキルを身につけるべき到達目標期間(1ヶ月以内、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後など)を決め、スキルを分類していきます。

ご参考2:スキルマップシート
(テンプレートと記入例があります)

この作業自体は、1人で実施すると考え込んでしまいますが、グループワークにすると実に楽しく、満足感の高いワークになり、大変盛り上がります。その理由は以下の3点です。

  1. 自分の部下や後輩にどんなスキルが必要かについて議論する場がなかなかないから。
  2. 自分の気持ち(若手の育成で悩んでいることや自分が過去困ったことなど)を同僚と共有することで、安心感や、満足感が得られるから。
  3. 組織にとって有益なスキル体系を作り上げるという、達成感が得られるから。

 

【ステップ3】
管理職による若手に必要なスキルの洗い出し?スキル洗い出しシートの作成

 

【ステップ4】
管理職が議論しながら項目に軽重をつけ、スキルマップを作成する

ステップ1・2の中堅層と同じ作業を、管理職にも並行して行ってもらいます。中堅層とともに、管理職にも若手に必要なスキルを考えてもらう理由は、中堅層が新人と感覚が近いために、新人・若手に有効なスキルを細かく挙げることができる反面、要求が厳しく高い目標を掲げがちであるためです。それに対して、管理職は(悪く言えば、それほど新人・若手に多くを期待しないため)、「最低限ここまでやってほしい」という現実的なレベルで目標設定ができます。

 

【ステップ5】
スキルマップの統合

中堅層と管理職にスキルマップを作ってもらった後、人事研修部門でそれを統合します。中堅層と管理職で見解が異なる場合には、現実的に妥当な水準で選びます。また、難易度が高く、現実性や具体性のないものは除きます。

 

【ステップ6】
人事・経営の視点からスキルを付加してシートを完成

新人・若手が自分達で学びたいことと、現場の中堅層や管理職が身につけさせたいと考えていること、さらにトップや人事・研修担当者が学んでほしいと考えることは異なっている場合がよくあります。

中堅層と管理職が挙げた新人・若手に必要なスキルに加えて、経営層や人事・研修担当者が「どうしてもこれだけは身に付けさせたい」という以下3種類のスキルを付け加えます。

  1. 組織の成長を実現するためのノウハウ、知識。
    例えば、新分野の業務知識、技術教育、語学教育など。
  2. 組織を維持するための研修
    コンプライアンス研修、セクハラ・パワハラ研修など
  3. 経営上のニーズが高いテーマ
    経営理念教育、業務改善など

研修計画の立案

最後に、「スキルマップ」を元にして、「育成計画書」を作成します。いつ、どんな方法でスキルを身に付けていくかを考えていきます。
大きく分けて、

  1. 人事・研修部門主催の集合研修
  2. 現場で実施するOJT
  3. 社員自ら学ぶ通信教育、Eラーニング

などに分類していきます。

ご参考3:育成計画書(テンプレートと記入例があります)

研修コスト削減のためとはいえ、スキルアップのほとんどをOJTや自己啓発に委ねると、現場が新人・若手の教育で疲弊してしまい、不満が出かねません。ここは冷静な目でOFF?JTに向いている内容に関しては、集合研修で実施します。また、同一・類似のものは、まとめて研修を実施します。このあたりの整理は、人事・研修担当者の腕の見せ所となるはずです。

 

ミニ集合研修の活用

集合研修とOJTの中間形態として、現場でのOFFーJT。ミニ集合研修を実施するのは非常に効果的です。
4・5名を集め、社内勉強会形式で、仕事の合間に研修を行っていくことは、スキルアップの効果を高めます。ただし、資料の用意や指導用マニュアル作成などは意外と時間がかかるだけでなく、少人数とはいえ、急に講師を任されるのは社員にとって、大きな負担になります。よって、人事・研修部門が事前にテキスト作成方法や指導スキルについての勉強会を開催し、「社内講師」を養成しておけば、スムーズにミニ集合研修が開催できます。

もちろん、今回の育成計画見直しに参画した中堅層、管理職層を最初に社内講師として養成していくのがよいでしょう。

育成計画作成の目的は、ズバリ「企業の永続的な成長」です。
上からの押し付けではなく、現場主導で育成計画を立てることにより、納得性の高い研修体系を容易に構築することが可能となります。

また、「3年後」、「5年後」、「10年後」の長期的な視野で、マネジメントの要素も加味して、新人・若手に必要なスキルを洗い出すと、より戦略性の高い育成計画を立てることができます。

 

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