インソース執行役員・井東が語る
2009年8月25日

労働基準法改正について

執筆者: WEBインソース編集部

労働基準法が、2010年4月1日から一部改正になります。
改正の目的と概要は、厚生労働省のHPによると、以下の通りです。

目的:長時間労働者の割合の高止まり等に対応し、生活時間を確保しながら働くことができるようにするため、労働時間制度の見直しを行う等の改正を行う

【概要】
1.時間外労働の削減のために、時間外労働の割増賃金の改正(中小企業には猶予措置を講ずる)
    
変更前:割増賃金は一律25%

変更後:時間外労働時間に応じた割増賃金の設定
45時間まで:割増賃金は25%
45時間超 :労使で時間短縮・割増賃金率の引き上げ(努力目標)
60時間超 :割増賃金は50%以上
引き上げ分の割増賃金の支払いに代えて、有給の休日付与も可能

2.年次有給休暇の有効活用促進のため、以下の改正

変更前:日単位での年休取得
   
変更後:5日分は、子の通院等の事由などに対応して、時間単位での年休取得を可能とする

つまり本改正は、残業代を引き上げることで、残業時間の抑止効果を狙ったものと言えますし、法律による抑止力は相応に働くのではないかと思われます。

できる限り残業時間を少なくして、仕事と生活の調和を図る「ワークライフバランス」を実現することには、大きな注目が集まっていますし、昨今の残業代未払い訴訟に見られるように、使用者が労働者の残業に関して非常に敏感になっており、労務管理は企業のリスクマネジメントの中でも、そのウェイトが高まってきています。

私も、残業時間を減らして、心豊かな生活を送ることについては、全く異論がありません。

但し、私が個人的に気になっているのは、残業時間を削減することが、残業代問題に刷り返られているのではないかということです。

つまり、残業時間を減らすためにどうしたらよいのか、会社全体でどう取り組んでいくべきなのかという議論もなされないまま、残業したら残業代がもらえるとか、使用者は残業代を払うべきという「お金」の問題ばかりが話題にのぼります。
本改正についても全く同様で、本質的な対策も講じられないまま、残業代を引き上げることで、強制的に残業時間を削減するという手段に訴えているだけのように感じられます。

それでは、そもそも労働を考えるうえで大切なポイントを考えてみたいと思います。

まず、労働には、「作業」と「仕事」に大別できるということです。
「作業」とは、与えられたことを決められた通りに行うだけのものであり、「仕事」とは、主体的、能動的、創造的、知的に業務を行うものであるということです。

このように言うと、「差別」だと非難されるのかもしれませんが、労働の「質」によって、両者を明確に「区別」する必要はあります。

次に、労働の価値を「時間」で測るのか、それとも、「成果」で測るのかということです。

製造現場や事務における作業は、「時間」で価値を測定できますが、営業、企画、研究開発などの職種の労働価値は、時間で測ることは難しく、「成果」で測ることになります。

つまり、「作業」と「仕事」によって、その価値の測定の仕方は全く異なってくる訳です。

2008年3月に施行された「労働契約法」の検討段階で、「ホワイトカラーエグゼンプション」が真剣に議論されましたが、結局時期尚早ということで導入が見送られました。

「ホワイトカラーエグゼンプション」とは、ホワイトカラーに対して労働時間規制を適用免除する制度のことであり、労働の価値を「時間」で測れないホワイトカラーに対して、残業という概念をなくそうというものです。

本制度が即労働強化につながる懸念があるということで、反対される方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

実際、過激な労働が原因による「過労死」の申請数と認定数が増加傾向にあるのも事実です。
2005年では、申請数が869件、認定数が330件もあります。

しかしながら、ホワイトカラーの労働対価と労働管理は本来別ものであり、両者をごっちゃに論じることは適当ではありません。
「ホワイトカラーエグゼンプションは、労働強化につながるから絶対反対!」という考え方しかできないようでは、何の進展もありません。

今後ますます「知価社会」、つまり知識、知恵に重きが置かれる社会になっていく中で、ホワイトカラーの労働対価を「成果」で測っていく流れは食い止めることはできないと思います。
そのような流れの中で、企業側がいかに効率的に業務を遂行し、残業を減らしていくかという真剣な取組を行うこと、管理職の方々が、労務管理についてきちんと勉強し、部下の就業管理を適切に行うことが、全般的に定着されるようになることが重要ではないでしょうか。
 

■公開講座?多彩なラインナップ、実践的なスキル・ノウハウを習得!

■研修・コンサルティングのお問い合わせはこちら