2009年8月25日

"リスクのマニュアル"と"マニュアルのリスク"

執筆者: インソース取締役:大島浩之

マルクスは洒落た人だと私には思えます。フランスの無政府主義者プルードンの「貧困の哲学」に対抗して書いたのが、「哲学の貧困」です。

今回、話題にしたいのは、マルクスではありませんが、「リスクのマニュアル」と“マニュアルのリスク”です。

「リスクのインフレ」と「人員増によるリスク対策」

私が、以前からリスクについて主張してきたのは、1つは、「リスクのインフレ」もしくは「リスクの洪水」が起きていて、どれが一番優先順位の高いリスクなのかわからなくなっている点です。

もう1つは、何かトラブルが起き、組織としてすぐにその問題に対処しなければいけない場合に、手っ取り早く「人を増やしてチェックを厳密にすればよい」という対応方法という点です。人が多くなってチェックする項目が増えてしまうと、リスクがバラけてしまって、誰もが無責任になってしまい、他人事(ひとごと)になってしまうからです。

「リスクのマニュアル」と「マニュアルのリスク」

そして、最近、おそれているのは、「リスクのマニュアル」です。
 

確かに、リスク管理の一手段としてマニュアル化は必要です。

しかし、分厚いリスクのマニュアル、更新がされていないリスクのマニュアルを見ると非常に危険に感じます。リスク管理の目的が、実状はリスクのマニュアルの制定だったという意見もよく耳にします。

いわば、“マニュアルのリスク”が問題になってきたのではないかと危惧しています。取り越し苦労であれば幸いだと思っているものの、気がかりです。

3年ほど前でしょうか。
甲子園の高校野球が盛り上がっていたころ、ある会社のクレーン船のアームが架線に触れ切断したために、首都圏139万世帯が大停電した事故です。
全面復旧に4時間42分かかり影響範囲が大きかったものの、1時間後に99%近くの138万弱世帯が復旧していた点も考慮に入れる必要があります。

ここでは、リスクのマニュアルという点で、このケースを評価したいと思います。

クレーン船の会社は、実は、99年にも同様な事故を起こしています。
そのため、マニュアルである「作業手順書」に、工事ごとに作られる安全管理マニュアルに「送電線に注意する」というように記載することを指示していたそうです。しかし、実際には、障害物への対応策や基準があいまいなままだったということです。

他方、電力会社のほうは、記者会見で、作業マニュアルにより事故発生から1時間で送電を再開したが、復旧訓練の充実や復旧操作の自動化などの対策を進め、「30?40分に短縮したい」と述べていました。実は、このマニュアルは、3枚もののペーパーだったそうです!300枚いや30枚でもないのです。

リスクのマニュアルとして使えるという点でいえば、好対照の状況を示しています。

薄いコンパクトなマニュアルで、しかもいざというときのための訓練に裏打ちされているもの、というところがポイントです。

皆さま方の職場にある「リスクのマニュアル」はどのような状況に置かれているでしょうか?

内部統制用に作ったままとか、どこにあるかわからない、データ化されていて埋もれてしまっている、分厚すぎて見る気もしない、・・・など“マニュアルのリスク”が徐々に大きくなっていないとは思いますが。念のためご確認いただくとよいと思います。

 

■関連研修 リスクマネジメント研修

■関連メルマガ キーワードで知る!コンサルの「眼」

 

 

■公開講座?多彩なラインナップ、実践的なスキル・ノウハウを習得!

■研修・コンサルティングのお問い合わせはこちら