インソース執行役員・井東が語る(6)
2009年10月26日

財務諸表を見る6つのコツとは?

執筆者: WEBインソース編集部

企業経営の目的は、「利益・キャッシュフロー」をあげることであり、その評価は、「100%数字の世界」である、
つまり、企業経営の通信簿は、「決算書」であると言えます。

企業は決算書を通して、自社の「実態」を正確に反映させる義務がありますし、内部統制(日本版JSOX法)では正に、財務諸表の信憑性を求めています。

企業は、「利益・キャッシュフロー」なくしては、存続できませんし、企業が倒産すれば、従業員とその家族、取引先などのステークホルダー(利害関係者)が不幸になってしまいます。

つまり、健全な企業経営には、健全な財務会計が求められ、一時的なごまかし(粉飾決算)によって存続できているとしても、長続きさせることは難しいのではないかと思われます。

私は今まで、様々な企業経営、特に企業再生に関わってきましたが、会社が存続できなくなった企業、存続の危機にある企業に共通して言えることは、財務諸表上の自社の課題・問題点を十分に把握できずに対策が講じられていなかった、あるいは、決算書を取り繕ってその場しのぎを続けていたことです。

財務諸表上の課題・問題点の把握ということで申し上げれば、驚くことに、再生になった企業の社長、管理部長、経営企画室長の多くが、自社の課題・問題点を「発見」できずにいることです。
「問題解決」という言葉はよく用いられますが、「問題解決」の前に、「問題発見」ができなければ、解決の糸口にさえも辿り着かない訳です。

そこで今回は、財務会計における数字の見方の6つのコツをご説明致します。

1.数字の全体像を理解する

財務諸表のポイントになる数字はしっかり把握する必要があります。
売上、利益、主要経費、総資産、純資産などが該当します。
この場合、数字を「額」だけでなく、「率」からも分析することが肝要です。(利益率、人件費比率、自己資本比率など)

2.数字を構造分解する

数字を様々な視点から分析することは非常に大切なことですが、これができていない人が多いというのが、私の実感です。
企業全体で言えば、部門別・事業別の採算を明確にする、売上・粗利益の中味を、商品別・顧客別・地域別などに分解して考える、在庫を仕入日・製造日に応じて分析し、年輪表を作成するなどが挙げられます。
常日頃から、様々な視点で分析する習慣を身につけていくことが重要です。

3.重要な経営指標を把握する

財務諸表を見る場合に、損益計算書(PL=Profit&Loss)をまず見て、儲かっているか否かを判断する人が大半ではないかと思います。

私はまずもって、貸借対照表(BS=Balance Sheet)から見ます。
なぜかというと、PLが過去1年間だけの期間損益を表している、
つまり、一過性の損益だけを反映させているのに対し、BSは企業がスタートした時からの資産・負債・純資産の蓄積状況を表しており、企業の実態がより反映されているからです。

私がBSでまずもって見る3つの指標を下記に挙げます。

a.自己資本比率(純資産÷総資産)
b.有利子負債償還年数(有利子負債÷返済原資(当期利益+償却費))
c.立替運転資金(売上債権+在庫?買掛債務)

a.によって、企業の安全性が分かり、
b.によって、有利子負債が利益水準に見合っているかが判断でき、
c.によって、運転資金の立替負担や資金構造が把握できます。
  
これだけでも企業の置かれている状況が容易に想像できます。

また、重要な経営指標ということでは、業界特有の経営指標が、業界水準に比べてどうなっているかを把握することです。
例えば、小売・外食産業であれば、月坪効率(1ヶ月1坪あたりの売上)、製造業・流通業であれば、人時生産性(1人1時間あたりの粗利益)などが挙げられます。

4.大きな数字を把握する

例えば、経費削減について言えば、やたらに細かい経費の削減に躍起になっている光景を見かけることがありますが、経営に与える影響度の高い経費から手を付けないと、目に見える改善はできません。

部門別・事業別の採算を見る場合には、不採算事業のコストを適正水準まで下げるとか、思い切って撤退するなどの、大きな判断を下さなければならない場合もあります。

また、売上予算の達成率が同じ80%である2つの部門があるとすると、売上比率の高い部門から手を付けるべきです。

以上、全社的経営の見地で言えば、大きな数字を把握することから出発することが肝要であり、次に細かい数字にブレイクダウンさせていくことが常套手段となります。

5.数字を時系列で追いかける

事業を時系列で捉えることによって、事業を「点」ではなく、「線」で捉えることことができますし、事業の「変遷」が見えてきます。
また、時系列で数字を追いかけ続けると、「異常値」の発生にいち早く気付くことが可能になり、すぐに対策を講じることができるようになります。
自社の業績であれば、過去5?10年(あるいはそれ以上)の決算を並べて見てみる、小売業であれば、毎日の売上を追い続けることが大切です。

6.同業他社と比較する

自社の数字の妥当性を判断するには、業界平均や同業他社数社の数字と比較することが有効です。
改善を要する場合には、同業他社平均、あるいは、同業のトップ企業水準まで改善させることを目標値に設定し、具体的な取り組みに落とし込んでいきます。
この場合、自社と同じ業態(卸業、小売業など)の企業と比較検討しないと意味がありません。同じ業界でも、業態によって収益構造が全く違うことも往々にしてあるからです。

以上、数字の見方のコツをご説明してきましたが、このようなコツは、頭で分かっていても、決して一朝一夕に身に付くものではありません。
常に、事業内容、事業の流れと数字をリンクさせて、様々な視点から分析することを継続的に行ってはじめて体得できるものです。

今日からでも始めてみてはいかがでしょうか。

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