2009年11月12日

大競争時代の大学経営について

執筆者: WEBインソース編集部

大学を取り巻く環境の変化

昨今大学を取り巻く環境が大きく変化し、大学経営も生き残りをかけた大競争時代に突入していると言っても過言ではありません。
近い将来、大学同士の合併・提携など、大学のM&Aが世の中を賑わしている可能性もあるのではないかと、個人的に考えています。
最たる環境の変化はやはり、少子化です。
平成4年度に205万人いた18歳人口が、平成21年度には121万人まで減少し、今後は120万人前後での推移が予測されています。
このことは、大学にとってのマーケットが今後は増えないということを意味します。
そうなると、限られたパイの中での大学間競争の激化や大学淘汰は必至であるということです。
また、大学・短期大学の収容力(入学者数÷志願者数)については、2009年度学校基本調査速報によると92.4%となっており、この収容力が早晩100%に到達する「全入」時代が到来するものと推測されます。
このことは、今までの「大学が学生を選抜する時代」から「学生が大学を選ぶ時代」へ着実に移行していくことを意味します。
もう一つの変化は、国立大学法人化、公立大学法人制度の創設(いずれも平成16年度より)と私立大学法の改正(平成17年度より)です。

健全な財務と運営を確保する必要性

これらによって何が起こったのかというと、ひと言で言えば、大学が民間企業並みの経営システムを導入せざるをえなくなったということです。
具体的には、「自己責任」での大学運営とその「透明性」の確保を主眼として、各大学が、中期計画の策定、財務諸表の開示、役員会制度の設置、人事評価システムの導入、第三者機関からの評価などを導入しなければならなくなりました。
大学は民間企業と違い、公共的、社会的意義が強く、利益追求を目標としている訳ではありませんが、それでも健全な教育を行っていくためには、自己責任による健全な財務と運営を確保していかなければならないということです。

これからの大学経営に必要な視点

以上のような環境の中で、大学はどのような視点で運営していかなければならないのでしょうか。
それには、まず第1に、”戦略的視点を持つこと”です。
そして、もう一つの大きな視点は、”経営構造を体系化させること”です。
まず、戦略的視点を考えるうえでは、「CS(顧客満足)」、「経営戦略」、「マーケティング戦略」という3つのポイントをおさえる必要があると考えています。

CS(顧客満足)

「CS」の観点では、大学にとっての「顧客」は誰であるのか、その「顧客」にどのような「サービス」を提供して「CS」を実現するのかということを、改めて考える必要があるということです。
学生というと、高卒学生を思い浮かべる方も多いでしょうが、社会人、主婦、高齢者など、顧客の定義づけはいかようにも決められますし、サービスについても、現在の教育サービスをすべて維持する必要もなく、集中と選択を図ることも考えられます。
いずれにせよ、顧客に満足を与えられない大学は、顧客からの支持を得られずに、市場から淘汰されてしまう運命にあるということです。

経営戦略

「経営戦略」については、「経営戦略」の定義が「市場における組織活動の長期的な基本設計図」であることを踏まえれば、各大学が、「どんなサービスをどのような市場に対して提供するのか」、「何を武器として、どんな能力を持った企業になりたいのか」、「将来に向けて、今からどんな組織行動を取るべきなのか」ということを、きちんと描くことが重要です。
生き残りをかけた市場ではやはり、「差別化戦略」、「集中戦略」が重要になってくるのではないかと思います。
具体的には、他大学と差別化できる個性・特色を持つことや事業領域を特定分野に集中してどの大学にも負けない「強み」を作ることなど、従来の「横並び」の発想から脱却して、「強み」を徹底的に磨くことで生き残りをかけるということです。
例えば、「総合」という看板を捨てて、特定学部に特化する大学が出てきてもおかしくありませんし、「スーパーCFO」、「スーパー営業マン」を養成する専門大学が出てきてもよいのではないかと思います。(あまりに突飛な発想ですが)
経営戦略全体を考えるにあたっては、バランススコアカードに基づいて「顧客の視点」・「内部ビジネスプロセスの視点」・「学習と成長の視点」・「財務の視点」の4つの視点で考えてみると有効です。
「内部ビジネスプロセスの視点」とは、戦略を実現するための業務プロセス、組織体制、各種制度、ルール、ガバナンスなど、内部の業務、経営管理をどうするかということであり、「学習と成長の視点」とは、メンバー(教職員)にどのようなスキルが必要か、何を学習したらよいのかという、人材に関する視点です。
「マーケティング」・「内部業務・経営管理」・「人材」・「財務」の4つの視点によって、バランス良く経営全体を考えることができ、経営戦略を「見える化」することが可能です。

マーケティング戦略

「マーケティング戦略」については、学生の「入口」から「出口」までを通しての一貫した戦略がポイントになります。
つまり、「どのような人材を受け入れるのか、そのためにどのようなプロモーション戦略をとるべきなのか」⇒「受け入れた学生に対してどのような教育を行うのか、そのためのカリキュラム、教員、施設設備などをどうするのか」⇒「どのような人材として学生を社会に送り出すのか、学生を社会に送り出すにあたっては、どのような支援を行うべきなのか」ということを、予め明確に決めておかなければなりません。
「出口戦略」については、実社会が求める人材像に合致した人材を送り出せるか否かが、社会からの大学評価に直結しますので、極めて重要な戦略になると思われます。

経営構造を体系化する

次に、”経営構造を体系化させること”ですが、これはつまり、「経営理念」⇒「ビジョン」⇒「中期計画」⇒「年度計画」⇒「PDCA」⇒「業績評価」という流れを全教職員がきちんと理解し、この構造を一気通貫で行うこと、しかも繰り返し継続的に行っていくということです。
この流れの中で最も大切なのは、「PDCA」だと思います。なぜならば、いくら立派なビジョンや計画があっても、「PDCA」がしっかりしていなくてはそれらを実現することはできないからです。
しかしながら、私の経験では、「PDCA」をきちんと行っている組織は案外少ないですし、「PDCA」の習慣のない組織であれば、根付くまでには相当な時間がかかります。
「PDCA」を定着させるには、コツコツと根気強く行っていくことしか道筋はないと思います。

経営トップのリーダーシップと全員経営

以上、大学経営について述べさせて頂きましたが、大学経営の舵取りが難しい時代にあっては、経営トップ(学長、総長、理事長など)の強いリーダーシップの下、全教職員が一丸となって知恵を絞りながら、顧客から支持される良質の教育サービスを提供することがポイントになるのではないかと考える次第です。

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