2010年1月 4日

事務リスクを管理するには?

執筆者: WEBインソース編集部

業務改善とリスク管理の両立が求められる現在

近年、仕事の効率化によるコスト削減を目的に業務改善活動が行われる一方で、トラブルやクレームを防止・回避するためのリスク管理に対する仕事の比重が高まっています。
具体的には、業務改善のために「業務プロセスを削減」する一方で「チェックプロセスを増やす」など、アクセルとブレーキを同時に踏むような状況になっていることも少なくありません。
確かに、「あっち立てればこっち立たず」のトレードオフの関係になることもあります。しかし、業務改善とリスク管理を対立関係ではなく、バランスよく両者とも実施していくことは可能です。

事務リスク管理が注目される理由

リスク管理において最も身近なものに「事務リスク」があります。単なるうっかりミスや勘違いによる小さなトラブルはよくあることですが、最近の特徴は、“現場のヒューマンエラーが大きな損害につながる”点にあります。中には、マスコミを賑わすような大事件に発展するものが少なからずあります。
例えば、証券会社におけるコンピュータ入力ミスがきっかけで、株式取引で数百億円の損害が発生した事件がありました。確かに、証券取引所や証券会社のシステムチェックが弱いといった問題はありますが、担当者が行ったオペレーションは、単に「61万円1株売り」とすべき注文を「1円61万株売り」と誤ってコンピュータに入力しただけです。うっかりや勘違いでも、笑って済まされない現実があります。
あるいは、マスコミを賑わす個人情報漏洩事件も、悪意のハッキングによるものより、ついうっかりのオペレーションミスで、公開していけない情報を誰でも見える状態にしてしまったケースが極めて多いようです。
このように、事務リスクないしオペレーショナルリスクは、担当者だけでなく、管理者さらに経営者も看過できない問題になってきたといってよいでしょう。今や、過失(ミス、ヒューマンエラー)に対する企業の社会的責任が強く問われる時代になってきました。

現場の問題をどう見つけるか?

(1)まず、仕事全体を把握し、リスクを洗い出す
事務リスク管理も通常の仕事と同じで、結局どんな仕事があり、それがどんな性格を有する仕事なのかを正確に把握する事がスタートです。その上で、現場における問題点を洗い出します。また、あわせて、リスクをはかる尺度を決めていきます。
これができれば、事務リスク管理のほぼ7?8割が完成したと言えます。管理対象の把握とそれに対するリスク評価のモノサシができれば、後は適切にチェックすればよいからです。

(2)特定の人物のせいにしない!
事務リスク管理の最大の阻害要因は、「○○さんが不注意でそそっかしいからダメ」「○○さんは仕事ができないからダメ」など、トラブルの原因を特定の「問題児」のせいにすることです。そうすると、すべての思考が停止してしまい、リスク管理を行う理由・必要性などを考える“なぜ”という問いを阻みます。
実際、「○○さん」を担当から除外しても、また新たな「問題児」が生まれるのみで、問題の根本解決にはつながりません。事務リスク管理とは、仕事の仕組みを変えることなのです。

(3)管理強化が無責任を誘発することもある
よくある間違いは、事務のトラブルが起きてひどい目にあうと、「リスク管理強化」と称して、チェック担当者を増員したり、あらゆる段階でチェックする対策を取ったりすることです。実はこれは大変危険な事です。チェックする人が増えると、かえって、“誰かがきちんとチェックするから、私は適当で良い”と無責任な態度を誘発させかねません。
また、すべてのプロセスを等しくチェックすることは、確認作業が形式に流れるだけで、重要なポイントを意識しないことと同じになります。さらには、お客さまサービスを損なってまで「リスク管理」が優先される事例も多々見受けられます。いずれにしても、「リスク管理強化」をしたはずなのに、効果が見られないといった事態に陥りがちです。

(4)リスク管理は改善しつつ行う
結局、事務リスク管理は全体最適前提に実施されなければいけません。また、楽しくないと続きません。「リスク管理をしっかりやった結果、仕事も楽になった」という状態が求められる姿です。よって、リスク管理は仕事をムリ・ムラ・ムダなく楽しく行う業務改善の考えに基き、仕事の中に潜む危険(リスク)を防止するしくみを手順の中に入れ込むことが重要です。

リスク洗い出し・評価に有効な2つの法則

事務リスク考える上で、知っておきたいのが次の2つの「法則」です。労働災害からの事例から導き出された比率ですが、リスクの洗い出しを考える際に大変参考になります。

(1)ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)
労働災害の事例を統計分析した結果、1つの重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の事故寸前の「ヒヤリとしたり、ハッとしたりする危険な状態」があるというものです。

(2)パレートの法則(20:80の法則)
重要な20%が全体の方向を決定しているという法則。多数の問題があるなかで、その内の重要な20%を解決すれば、おおよその問題は解決するというものです。

以上の2つの法則から言えることは、突然、大事故が発生するわけではなく、軽微な事故の認識と事故対策が有効であること、また、問題を整理し、重要な対策を打てば、大半の問題が解決することが分かります。この2つはリスク対策を現実的に考える上で示唆に富んだ法則です。

業務を整理してリスク管理する実践的方法

事務リスクを洗い出すためには、前述したとおり、まず、業務を整理することです。
そこで、今回は「業務洗い出し・リスク評価・対応シート」を使って業務の整理を実践的に実施していきます。

【業務洗い出し・リスク評価・対応シート】

(1)日常業務」「注意すべき業務」「特に注意すべき業務」に分ける
まず、仕事の性格を意識しながら業務を整理することが重要です。事務リスク上は、業務を3種類に分けるのが実践的です。

第1は、大半の仕事を占める定型的な日常業務です。一般的に管理者は、業務遂行が円滑に行われているか全体を管理し、個々の業務は担当者にチェックも含め現場委譲しているべきです。

第2は「注意すべき業務」です。管理者が特にチェックをし、業務の品質管理を行うべきものです。例えば、電話営業は日常業務ですが、電話応対でクレームになった場合は、管理者による業務管理を行うべき「注意すべき業務」になります。

第3の「特に注意すべき業務」は「日常業務」「注意すべき業務」に分類できないものです。これを洗い出し、対応策や予防策を考えるのが、リスク管理です。例えば、個人情報漏洩管理などについては、万が一流出し、トラブルになった場合、対応には日常の何百倍もの労力がかかることになります。よって、管理者みずからが日頃マネジメントすべき業務ということになります。

作業的な仕事の比率が高い部署(パート・アルバイトの多い部署)では、「日常業務」が90%、「注意すべき業務」が3?7%、「特に注意すべき業務」が1?3%という割合になります。(この割合は、記入者の実感)
管理者としては、このような業務の整理がされていれば、管理するポイントが明確で、“出たとこ勝負”という最悪の事態にはならずに済みます。

以上を、シートの「割合」欄、「あなたの部署の業務」欄に記載します。

(2)過去のミス・トラブル事例の洗い出し
ここで、業務の整理にあたって、具体的にミス・トラブル事例にどのようなものがあったかを洗い出す作業が重要です。
トラブル事例があらかじめわかっていれば、実際にミスやトラブルが起きたときの対応策は円滑に進みます。ミスが多発しているような場合は、システム化や標準化によりミスを減らす余地が見つかるはずです。
ここまでできたら、業務としてのリスク評価をします。例えば、影響の大きさと発生可能性を勘案して、リスクを大・中・小に分けてみます。

以上を、シートの「過去のミス・トラブル事例」欄「リスク評価」欄に記載します。
業務課題は、この過去のミス・トラブル事例の中から発見することが可能です。

(3)事務リスクの防止対策検討
業務の課題が掌握できたところで、事務リスクの防止策を検討することになります。対策を考える際の代表的なアプローチとしては以下の4つが考えられます。

・仕事の標準化(ルール厳格化、共通の手順化、単純化など)
・システム化、プチ機械化・プチシステム化
・分業化
・集約化

 

関連記事:事務リスクの防止対策を検討する事務リスク管理研修の実施方法

関連研修:リスクマネジメント研修業務改善研修

関連メルマガ:キーワードで知る!コンサルの「眼」

■公開講座?多彩なラインナップ、実践的なスキル・ノウハウを習得!

■研修・コンサルティングのお問い合わせはこちら