研修番外編(10)
2010年3月 1日

ナレッジマネジメント研修番外編-カッパ(κ)の話

執筆者: インソース取締役:大島浩之
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カッパロケット~親近感・夢を引き出す

カッパ(κ)といえば、私にとっては、カッパロケットを思い出します。

若い人にとっては、プロジェクトXでも取り上げられた純国産ロケットH-Ⅱとか、月探索機「かぐや」をあげたH-ⅡAロケットが有名でしょうか。

今となっては、忘れられたロケットがカッパかもしれません。

それはともかく、私が物心ついた1960年代、日本のロケットといえば、「逆転の発想」で有名な東京大学宇宙科学研究所(当初は生産技術研究所)の糸川英夫率いるカッパ・ラムダ・ミューのギリシア文字のシリーズでした。

特徴としては、固体燃料を使ったロケットという点です。

これに対抗して、液体燃料を中心に開発した宇宙開発事業団が出来たのが1969年のことです。

ちなみに、この2つと航空宇宙技術研究所が統合して、2003年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)ができました。老舗の宇宙科学研究所はJAXAの中で「宇宙科学研究本部」に継承されているようです。

1955年の「ペンシルロケット」を嚆矢とした日本のロケット開発は、「ベビー(ロケット)」と続いた後、ギリシア文字シリーズが登場しました。アルファー・ベータ・ガンマ…となるはずでした。

ところが、1957年~58年、国際的な科学プロジェクトである国際地球観測年の影響を受けました。太陽の磁気が地球に与える影響を研究するのが主目的であったため、まだロケットの開発が緒についたばかりにもかかわらず、果敢にも宇宙観察を目指したわけです。まだ太平洋戦争の敗戦の残滓を残していた時代ですので、国際的地位を認めてもらうためでした。

【国際地球観測年記念切手:私の年代では切手収集の趣味がはやっていた】

国際地球観測年記念切手.jpg

そこで、アルファ・ベータは机上計画に終わらせ、どういうわけか、ガンマ・デルタなどを省略して、いきなりギリシア文字の10番目のカッパが登場しました。

糸川英夫の鶴の一声と決まったと言われています。

「河童」にあやかって命名されたとも言われていますが、真偽のところは不明です(「昭和のロケット屋さん」P40、的川泰宣「やんちゃな独創―糸川英夫伝」P126参照)。ただし、その後、ラムダ(λ)・ミュー(μ)と順番に続いているところを見ると、ギリシア文字のカッパ=κがごく自然です。

それよりも、なぜ、カッパまで一気に飛び越えたかが謎です。

ところで、カッパロケットというとどのくらいの大きさかわかりますか?

1969年7月にアメリカのアポロ11号が月面に着陸した際のサターンⅤロケットは全長110メートル、底部の直径は10メートルあります。

これに対して、カッパロケットでは、ロケットモーターの直径は最大で42センチメートルです。K-8M型(3段式)で全長は10.9メートル、底部の直径が44センチメートルです。

ちなみに、1970年、日本の最初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げたラムダロケットL-4S-5号機は全長16.5メートル・4段式・ロケットモーター直径73.5センチメートルです。

外径の大きさからいって、カッパロケットは、身近な存在に感じられました。

 

 

カッパロケットK-8.jpgのサムネール画像

手作りロケットに学ぶ~誤差やばらつきを体得

なぜ、カッパロケットを身近に感じたのでしょうか?

実は、少年時代、私はロケットを作っていました。といっても趣味の模型用ロケットです。

私も含めて、少年時代はいわゆる工作少年が周囲にはごろごろいました。ミニュチュアですが、ゴム動力の飛行機やヘリコプターを作ったり、マブチモーターでクルマや電車を走らせたりしました。今はいい年した者が「大人の科学」を楽しんでいますが、おそらくそのような人は「子供の科学」をむさぼるように読んでいたのではないでしょうか。

この延長線で模型ロケットを作っていたわけです。

今の言葉でいえば、モデルロケットです。

模型屋さんに行くと、模型用固体燃料ロケットエンジンが目に止まりました。確か、船舶模型や飛行機模型に取り付けるのが一般的だったようでした。

しかし、好奇心旺盛な少年は、自然とロケットを上空めがけて飛ばしたくなるものです。

当時雑誌などで見たアメリカのタイタンロケットやアトラスロケットなどに似せて紙などでボディを作成して模型用固体燃料ロケットエンジンをつければ、とりあえずはロケット出来上がりです。

ジェットエンジンと違って、酸素がなくても飛ぶものがロケットですから、ホンモノのカッパロケットと原理的には同じです。

船やグライダーと違って、上空に向けて飛ばしますが、なかなか思うようにいかなかったことを覚えています。

それでも、なんども試すと、うまく飛ぶようになります。

マニュアルはなく、いわゆる試行錯誤で、身体で覚えるというのが普通でした。

いわゆる暗黙知としてノウハウ・コツが身についてきます。

一方、どのくらいの高さまで飛ぶのだろうかと疑問がでてきます。

小学生の理科では習いませんが、ロケットの重さ、推力、燃焼時間からある程度推定していました。以下のとおりです。力学や微積分の知識がなくても、なんとか導いていました。自分ながらすごいなと今さらながら驚きます。

▼条件

m1=ロケットボディの質量=40グラム=0.04キログラム

m2=ロケットエンジンの質量=4グラム=0.004キログラム

n=推力=2.5N秒

t1=燃焼時間=0.45秒

▼計算式  ※g=重力加速度、落下速度は重力速度損失とする

 ロケットの平均質量M=m1-m2/2=0.04-0.004/2=0.038キログラム

 燃料終了時の速度V=n/M-2gt1=2.5/0.038-2×9.8×0.45

  =57.0メートル/秒⇒時速205キロメートル

 燃料終了時から落下までの時間t2=V/2g=57.0/2・9.8=2.91秒

 高度h=1/2×V×(t1+t2)=1/2×57.0×(0.45+2.91)=96メートル

しかし、このとおりになることはありません。

要は、誤差があるのが当たり前だということです。

今から思えば、私にとって、工作少年として学んだのは、ものごとには誤差とかばらつきがあるのが当たり前という点です。机上で考えたことは理想状態かつシンプルな条件ですので、実際とは違っていて当然でした。

そういえば、手作りロケットは、現在、世界的に“モデルロケット”として趣味や教育目的で普及しています。

我が国ではマイナーな趣味かもしれませんが、本場のアメリカでは、思わずため息がつくほどのすごさです。

高度100キロメートル飛ばしたとか(100メートルではありません!)、サターンⅤの10分の1のスケールモデル(全長11メートル)が登場したとか(カッパロケットと高さは同じです!)、度肝を抜かすような状況です。  モデルロケットの機体とエンジン.jpg

 まあ、最初は手頃なところで、ペットボトルを使ったロケットなどで十分かもしれません。JAXAのページにも、「チョコレートの筒で作るモデルロケットの製作」として、紹介されています。

http://iss.jaxa.jp/kids/kousaku/kousaku02.html

なお、モデルロケットの取扱いはライセンスが必要です(日本モデルロケット協会)。

http://www.ja-r.net/

ナレッジマネジメント(知識伝承)研修、パソコン組み立て研修のおすすめ

以上、考えてみれば、私より上の団塊の世代などを見ていますと、実は、工作少年でかつ匠の技を仕事に活かした方が少なくありません。

誤差やばらつきを知りトラブルを想定したうえで精度の高い仕事をしているのではないかと思います。大掛かりのものでなく、上記のような身近な工作的なものについての知恵をお持ちのようです。

言われてから久しいですが、団塊の世代ないし50歳台の人の知恵を組織的に継承していくことが求められています。

とはいうものの、いざ、何を後輩に伝えたらいいかと迷われると思います。

そこで、ささやかな形ですが、インソースの「ナレッジマネジメント(知識伝承)研修」をご検討されたらいかがでしょうか?

あるいは、「理科離れ」とか「技術離れ」した若い人に対しては、パソコン組み立て研修などの体験学習はどうでしょうか?

私のパソコン暦は70年代後半のマイコン時代からのつきあいですが、Windows95が出たときに、パソコンを実際組み立ててみました。

パソコンも実際に自分で組み立てますと、普段あまり意識しないBIOSとかドライバなどを知らなくてはならず、パソコンがどのように動いているか、そのしくみが実感できます。

また、部品によって相性がよいものと悪いものがあったりすることがわかります。

意外に思うかもしれませんが、デジタル機器でありながらアナログ的なところもあります。

誤差とかばらつきが影響しているものと思われます。

昔なら、ハンダゴテやニッパなどの工作道具が登場しましたが、パソコンはネジとドライバによる組み立ての世界で、工作的な醍醐味はそれほどありません。それでも、全体を見る眼を養うとか本質を知るきっかけとなるに確信しています。

最後に蛇足

そういえば、1960年代のカッパロケットが飛んでいた時期、カッパ(河童)ブームだったようです。

確か、私も、水木しげる「河童の三平」や清水描く「カッパ天国」を楽しみながらカルビーのカッパエビセンをつまんでいたように思います

それから、ホルンを吹いているカッパをロゴマークとした光文社のカッパブックスも本屋さんの売り場を占めていました。例えば、多胡輝「頭の体操」などがそうです。

となると、やはり、カッパロケットは、カッパブームにあやかったというところも否定できません。

 

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