奈良時代の休暇の規定
現在も労働基準法などの労働者条件を定めた法律がありますが、奈良時代にも、すでに役人の休暇の規定を定めた「仮寧令」(けにょうりょう)という法律が設けられていました。
その規定によると、役人には6日ごとに1日の休みがあり、さらに5月と7月の農繁期には、「田暇」(でんか)という田植え・収穫のための休暇が別途定められていました。(1度にみんなが休むと大変なので、2組に分かれて15日ずつの休暇をとる)。また、身内に不幸があった場合にも、現在の忌引と同じように服喪の休暇が定められていました。(父母の場合は、現在の仕事を辞めて、喪に服す。祖父母(父方)、外祖父母(母方)などは30日の服喪期間など)。
下級役人の労働環境
一般的な休暇の規定は以上のようなものですが、それでは、当時の役人=サラリーマンが臨時に休暇をとる場合は、どのような理由で休んでいたのでしょうか?
奈良時代には、たくさんの写経が作られていましたが、それに従事していた下級役人たちの「請暇解」(しょうかげ)と呼ばれる休暇届が現代に残っています。
写経に参加した役人達は、長時間、同じ姿勢で座りっぱなしであったため、足の病気や腰痛などの理由で欠勤する役人が多かったようです。また衛生環境も悪かったようで、腹痛や赤痢などの消化器系の病気で休む役人も多くいました。写経事業の仕事場の労働環境は本当に悪かったようで、役人たちから労働環境の改善要求がでることもありました。
4箇条にわたるその要求の中身は、
・以前に支給された衣服が汚れていたんでおり、洗ってもなお臭い。新しいものにかえてほしい
・毎月5日間は休みがほしい
・食事が粗悪である。黒飯ばかりではいやだ(白米が食べたい!)
・案机(つくえ)に座り続けているため、胸が痛く脚がしびれる。3日に1度は酒を支給してほしい。(酒を飲まずにやってられるか!)
というようなものになっています。どれも、納得できるものですが、特に一番最後のものに大きく頷けます。
変な休暇理由
変わった休暇の理由としては、
・「穢れた衣服を洗うため」:5日の休暇
そんな理由で休みが取れる?しかも長すぎる。洗濯は1日で十分では?
・「今月十六日の夜、私盧(自分の家)の物を盗まれたため」:3日の休暇
ショックで仕事も手につきません!
・「親母の胸病を療さんがため」:3日の休暇
親孝行な人だ
・「身、疹病に沈み、動転することを得ず(はしかにかかって動けない):
日数不明
大人になってからのはしかは大変です
・「私の祭礼のため」:2日の休暇
祭り好き?
・「身を沐浴し浄めんがため」:4日の休暇
体を清めるのに4日もかかるのでしょうか?
などがあります。
休暇延長の申し出もできた
また、休暇の申請をしても、病気が治らない場合はさらに休暇を延長する場合もありました。
例えば、「(今)月五日を以て赤痢起こるによりて、三箇日の暇を給ひて罷る(まかる)。しかるに今日までいまだ息癒(回復)せず。仍ち(すなわち)緩遅(カンチ、さらに休暇をとる)の状を注し(状態を記載し)、謹んで以て解す(つつしんで休暇届を出します)」とあり、赤痢になり、3日間の休暇をとったが、回復しないため、さらなる休暇を求めています。
これに対して、会社=写経所の側は、「若し(もし)、病、息平(回復)せば、昼夜を避けず(昼夜を分かたずすぐに)、寺家(東大寺の写経所)に参向せよ。敢えて姦滞せざれ(ぐずぐず家でとどまっていることがないように)」というように、休暇延長は認められましたが、病気が治ったらすぐに出勤するようにと念押しされています。
いつの世も、会社を休むのは大変です・・・。
みなさん、お体をご自愛くださいませ。
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